文書管理コンサルとは?


電子化の前に紙文書管理が重要

紙文書管理の実態


電子帳簿保存法の前に紙文書管理を改善

電子文書管理の変遷

電子帳簿保存法の施行が決まり、それと同時にインボイス制度も2023年から始まりますが、日本国では電子化、デジタル化、ペーパーレス化に向けて準備段階に入ったと言えるでしょう。実は小生過去に文書管理コンサルティングをやっていた時代があります。かれこれ20年になりますが、コンサルティングサービスを全国の自治体約100か所程度に実施していました。その経験をもとにコラムに書きます。過去にも電子化の流れがありましたし、そもそも紙文書も含めた文書管理そのものはアーカイブという概念もあります。奥が深いのでコンサルはとても面白かったです。その当時コンサルをしたU町やK町といった自治体の名前を付けて事例を紹介します。全て私が経験した事実です。 また当時は国立印刷局の官報の原本性確保という考え方もありました。地方自治体では書庫に何十冊もの官報がある自治体も居られるでしょうが,官報はもう電子化されていますね。以前は全て紙媒体でした。そして当時の原本性確保とは「e-文書法」に対応して,タイムスタンプによって 原本性を時刻で認証していこうというシステムです。 本日のコラムでは最新の電子の事例を交えながらお話をさせていただきます。そして文書管理システム導入事例(成功例・失敗例) もいくつかお話します。システムを導入しても文書管理上の課題がすべて解決するわけではありません。過年度の文書, 1年前の保管文書,現在の文書,それから規程,これらについて(文書管理上の)改善をしなくては,システムを導入しても,単なる起案書作成システム,目録管理 システムにしかなりません。文書管理の改善なきシステムであれば ,職員の方がExcelやAccessで起案書作成システムや目録管理システムを作れます。そのようなものに何百万円も予算をかけて(システムを導入する)ということは勿体無いことです。

導入事例その1 K町の事例

導入事例その1としてK町(人口約5000人)=紙文書の整理なくして,システムのみ導入した事例です。K町の場合,背景からいうと,そのとき文書の目録がなかったり,起案書の書式が各課でバラバラでした。決裁欄の様式も各課で異なっていました。文書も,手書きの人もワード作成の人もいる。このあたりの書式の統一が必要ですし,若い方と中高年の方と文書の作成の仕方のこだわりがかなり違います。いつも ならばヒアリングをして書庫の下見をして規程を見て,文書分類を見て書庫の整理作業を行って,事務室内のファイリングの仕方を見て,過去データを全部データ化して,それからシステムの導入ということになるのですが,「もうそんなのいいよ」と言われまして,一般的な文書管理パッケージのみ(収受・起案・決裁・ 保管保存・廃棄・歴史的資料の保管という流れのシステムのみ)導入させていただきました。 効果はそれだけでもあります。文書・ファイルの目 録が起案すればほっといても出来て行きます。過去の起案書を流用して活用起案も出来ますし,当然事務作業も軽減されます。しかしながら,問題点がたくさん出てきました。簿冊の中に複数年のファイルが収納されてしまう。総務課の引継ぎはナシで各課が勝手に書庫に持ち込み,保存リストもない。定期的な廃棄が無いため,廃棄リストもない。要は起案書作成システムになってしまい,せっかくのシステムが生かされていない,ということが出てきました。 自治体の仕事は文書に始まり文書に終わる,そういう業務の中で皆さんに意識改革をしていただく。私のように第三者が総務課に代わって言いにくいことをどんどんお伝えしていくが必要だと感じていました。

導入事例その2 N町の事例

導入事例その2 N町(人口約 1 万5000人)=紙文書の整理をしながらシステムを導入。N町の場合には ,整理作業をしました。もともとバーチカルファイリングを行っていて,ホルダーを立 てて色別に管理されていました。しかしこれが崩壊してきたので,見直ししたいというニーズと情報公開の 目録がないということでシステム導入を検討されました。こちらは,ヒアリング,書庫の下見,規程・分 類の見直し,書庫整理・事務室内整理,過去データ作成,全てをやって導入しました。その時の問題は業者だけがすべてを行ってはいけないということです。職員にも汗をかいていただく。私どもは判断業務は出来ませんので,クラークと呼ばれるスタッフ(保存年限のプロ)を入れて判断業務を行っていただく。一緒に廃棄する保存箱を廃棄する場所まで持って行っていただく。そうすると自分たちできれいにしたところは,汚すまいと思うのです。その他の効果として,文書検索システムを確立して、3分間以内に文書を探してくる,「あり場所探し」 が出来るようになってきました。ただし,残念なことに,歴史的資料に関してあまり意識がありませんでした。整理業務を通じて,歴史的資料を発見できたということが,一つのステップアップではなかったかと思います。最近の文書管理システムはデジタル化の中で効率化され安価なものが増えていますが、歴史的資料の管理が出来るデジタル文書管理は必須条件でしょう。ただ,歴史的資料か行政的価値のある資料かという区分は,担当の職員ではなかなか区別がつきません。このあたりはシステムのほうで解決することは難しいのです。アーカイブス専門の方と共有して課題として検討していく必要があると考えます。そしてこれからの課題なのですが,専用線とクローズされたネットワーク領域の中で、今後は国からもたくさん(電子文書が)来ると思いますし、国民が行う申請業務も多くが数年以内に電子化されることでしょう。それをどう管理していくか。そして2年も3年も経過し、放置をすると文書管理は崩壊していく事が常です。これが文書管理の難しさだと思います。意識も低下してきます。 紙文書も電子文書も定期点検をやりましょうといっています。半年に一度でいいかなあと思っています。各課の文書量の増加,ファイリングの方法の点検,職員のうち文書を膨大に綴じている人はいないかどうかなど ,点検しようと言っています。電子管理の場合であれば、複数媒体バックアップや履歴管理など。

導入事例その3 U町の事例

導入事例その3 U町(約 2 万5000人)=電子決済,電子文書の原本性確保のシステムを導入した事例 ここは首長のトップダウンで情報公開の対象文書の範囲を全面的に広げるよう命じられました(それまで 平成14年文書までの公開だった)。そのための整理が急務だったことに加えて意思決定のスピードアップのために全市の電子決裁を導入し,住民への説明責任を果たすために電子文書の原本性確保のシステムまで導入したのです。ここは書庫整理や過去データの管理を自分たちで実施されました。 まずは引継ぎ・リテンションも含めて保管保存の切り分けが出来るようになりました。「あり場所管理」から事務室内文書の対応も電子データの対応も出来るようになりました。 ここが早く進んだのは,e-文書法にいち早く着目したことが大きいと思います。その当時e-文書法は民間事業者向けに適応されているものですが,このタイムスタンプを取り入れることによって電子データの保証は10年持ちます。当時のSSLの認証だと 5 年しか持ちません。タイムスタンプは 国からお墨付きを貰ったタイムセンターからインター ネットの回線を通じて打ちますので公的な証明になります。ただし10年しかもちません。税務書類が電子文書化して 7年経ったからこのe-文書法が出来たんですね。こういった背景もふまえて,早くから自治体が取り込まれたというのはすごいと思います。では課題は何か。U町は職員の判断で文書を電子化できるかどうか決めています。それで20パーセ ントくらいの電子化率です。要は無理がない中で電子化にトライしていますので今後もっと財務会計や庶務なども電子化していければいいのではと思います。 上からの押し付けではないので,スムーズに流れています。結論として電子データも紙データも流れは一緒だというのが小生の考え方です。紙であろうが電子であろうが同じ管理をするのが得策です。電子電子と騒ぐ前に紙の管理をきちんとしましょう,ということです。紙の管理が出来ない自治体は電子の管理はもっと出来ません。紙も電子も同じ流れなんですね。受付から配布して収受して供覧になるもの,発意起案して回議して決裁して保管して引継ぎするもの,それから保管されている文書を活用しながら,また発意していくもの,いろんな流れがあります。 外部から入ってくるものはLGWANもありますし , LGWANメール,インターネットメール,それから紙文書もあります。電子書庫と紙書庫を同レベルで管理します。紙だからこういう検索をするとか電子だか らこういう検索をするというわけではなくて,同じ土俵の中で紙ならば目録,電子ならば全部のデータを原本性を確保しながら,タイムセンターから刻印して保持していくのです。そして廃棄のプロセスが あるのですが,歴史的資料を救うプロセスは必須です。こちらはないがしろになりがちですけれども,岡山県のように記録資料館のほうに持っていかれる自治体も結構いらっしゃいます。こちらの流れも文書管理のポイントとしています。

導入事例その4 H町とS町の合併事例

導入事例その4 H町とS町=合併後の文書管理維持崩壊の事例 H町はバーチカルファイリングでフォルダーできれいに管理されていました。S町はルールがあっても守られず定期的な廃棄もない自治体だったのですが,合併後H町のファイリングは崩壊してしまいました。ルールが統一されなかった,保存場所を明確にしなかった,などの要素もありましたけれども,根本的には合併対応の事務作業の中で公文書管理の優先順位は低く,この時期に文書文書と言ってくれるな,ということが原因としてあったと思います。

導入事例その5 M市の事例

導入事例その 5 M市( 4 万7000人)=第三セクターの会社に文書の管理・検索・配送作業をすべて任せた事例。本当にこれで出来るのか ,と最初は思っていまし た。その理由はセキュリティー対策です。個人情報が漏れる場合,結局職員から漏れてしまいます。M市で は厳重に管理して,勝手にモノは出せないようになっています。また配送サービスが成り立つか,どうかで すが,合併して場所がかなり離れています。そういったところで人件費の削減を狙っているわけです。この成否はこれからでしょう。地方自治体における文書管理の現状と課題 として文書管理システム導入の目的として、なぜ今文書管理が言われるのか。それは電子化の流れが本格的に到来しているからです。しかし,何のために文書管理システムを導入するのか,何のために電子化するのか。ということを考えて導入しないと失敗します。今から10年前は情報公開のために,何千万円もかけてシステムも導入して書庫も整理して準備したけれども,開示請求は一件もない,という自治体もけっこうおられました。しかし今はいわれなくなりました。小生がその当時、そして今も感じていることで、一番皆さん方に考えて欲しいのは検索時間と歴史資料の保存です。まずは検索時間の短縮です。簡単に言うと人件費の削減なんですが、人減らしというわけではありません。 3分以内で文書が探せる,という仕掛けが作れるかどうかです。本当にそれが可能な自治体はシステムが無くても,バーチカルファイリングでファイル管理表があって「あり場所管理」が 出来ていれば,3分以内で捜して来れるはずです。これをしようと思うと事務室内,書庫を働き易くしないと出来ません。要は文書管理は職員の皆様方のためにあるということなんです。住民のため,電子自治体のためということもありますが ,本来あるべき姿は自分たちのために (文書管理を)立ち上げる,ということが意識改革につながって行きます。 もう一つのポイントは,日ごろ文書を作られて記録して保存して廃棄するという流れは,歴史的資料も含めて,それらと行政的価値があるものとを区分けしてきちんと記録して保存する義務があるということです。こちらをどれだけシビアに遂行できるか,という所になります。昔の文書管理システムはどちらかというと目録だけを管理するものでした。最近はレコードマネジメントです。記 録することから始めてそれを保存して廃棄する(ライフサイクルを管理する)。歴史的資料は区分して保存するということになります。

電子化のメリットと課題

これから始まる電子は画期的なものとなると思います。民間の会社に家賃を払ってまで書庫にしていた自治体が電子化で家賃が浮いたということも聞きます。定性的な効果として情報の共有化,事務効率の向上,執務環境の改善,電子化の促進,などが期待でき,定量的な効果としても,保管用スペースの削減や人件費の削減が期待できます。 地方自治体における文書管理の問題点として一般的な文書管理上の問題点を挙げて見ます。

    一般的な文書管理上の問題点

  • ライフサイクルが徹底していない。
  • 歴史的資料の保存意識が薄い。
  • 文書管理上の)ルールがない。運用が個人任せ。
  • 書庫が満杯で文書と物品が混在。
  • 什器と文書のサイズが不一致,収納効率も悪い。
  • 文書探しに時間がかかる。
  • 文書目録なし。あっても更新なし。
  • 効率よい文書管理方法が職員に理解されない。
  • 文書整理の時間が取れない。

色々耳が痛い話がありますけれども,一般的な事例としてこういうものが多かったです。机の上に山のように文書が載っている自治体の方がこれまではよくいらっしゃいました。什器の上,机の 上,足元ですね,私物化の最たるものですね。私がもしこの自治体の職員であれば,貴重な文書は 絶対にこの書庫には持っていきませんね。足の踏み場もなく紛失してしまうことは明瞭です。紙も電子も一緒です。こんな状態では電子化もままなりません。総務課と相談してこんなアンケートを取ります。次の平均値が出てきます。ここから改善点を探っていきます。職員の意識改革とともに検索時間の短縮や歴史的資料の区分が大切だと理解していただけると思います。

    文書管理アンケート結果

  • 自分管理の文書で必要な時にすぐに取り出せない ことがある 約50%以上
  • 他人管理の文書で必要な時にすぐに取り出せない ことがある 約95%以上
  • 整理すれば捨てられる文書がある 約90%以上
  • 廃棄時に迷うことがある 約85%以上
  • 文書管理改善を実施すべき 約95%以上
  • 実施したいが時間がない 約50%以上
  • ファイリングシステムについて教育研修を受けたことがある 約 5%以下

電子文書管理推進における留意点 —紙と電子の関連付け— 様々な電子○○システムというものがありますが, 一点注意しておきたいことがあります。それは,発生の段階から電子作成されている電子データなのか,発生の段階は紙でその後電子化されたデータなのか,二つに大別されると思うのですが,要はそのシステムから発生した保存データの原本管理の問題です。やはり 原本として紙データを取っていくのか,電子データを原本とするのか,難しい問題です。電子帳簿保存法も出来てきましたが,今はまだまだ紙原本がいいと思います。外部からは紙が来ますし,添付文書も紙,書庫にも紙文書が あるので,紙文書をきちんと扱えてなおかつ紙文書の原本のことも考えてシステム導入すべきです。要は永遠に紙文書はなくならないわけで,紙文書と電子文書を関連付けて管理しないといいことになりません。 電子化推進の留意点としては電子データの定義付けが大切だと思います。職務上作成した,職務上取得した電子文書という点です。そのほかに現在の文書管理 (紙)にあっているか,紙文書の管理が考慮されているのか,また運用面での問題解決が大切です。業務改善,意識改革なしに,成功はありません。それから,セキュリティー管理,原本性確保が不可欠です。また,電子データはめくるのが下手です。この見読性や保存性の確保は考慮するべきですが,だんだん解消されてきています。一度に何十枚のPDFを表示したりすることも出来始めています。それから,最後に開示請求の対象に操作ログがはいっていることを確認すべ きです。みなさんあまりご存じないのですが,文書管 理システムを導入される場合,操作ログ(いつ誰が記録 を作成し開示し廃棄したかなどの記録)の有無を,チェッ クすべきだと思います。 最後になりましたが,要は職員のため皆さんのためのシステム作りです。皆さんの仕事がしやすくなる, 政府のシステムとも結びつけていきながら,やがて住民のためという形で結び付けて行かないと,電子自治体に向いづらいのではないかと思っております。たかが文書管理、されど文書管理なんです。

いかがでしたでしょうか?20年前に広島の公文書館様で講演をさせて頂いた内容から抜粋しました。なので、かなり古い情報かと思いましたが、文書管理業務は昔も今も変わっておらず、発展していないことがわかります。懐かしい言葉ですが、有名な文書管理コンサルさんのキャッチコピーを思い出しました。「机の上は滑走路!」という合言葉でオフィス内そして机の上には、何も置かない。帰宅する前に文書を放置しない。という考え方ですが、懐かしい言葉です。そして地方自治体のみならず、民間企業の文書管理は顧客サービスの品質向上、コンプライアンス確保、という面からメリットを追求する必要があります。電子帳簿保存法のシステム要件も国で定められておりますが、その要件に満たすシステムを購入される前に、企業内の文書の種類や保存年限の見直し、個人任せになってしまいローカルパソコンに保存されている電子データの洗い出し、データの改ざん、紛失を防ぐための対策、社員が離職した時の引継ぎ等に伴う電子データの詳細管理、メール等で取得したデータのアクセス管理、など電子化する前に一度整理することをお勧めいたします。もちろんツールを購入してシステムで完全管理することも良いでしょう。しかしながら厳しい文書管理ルールを徹底して、ツールに任せてしまうと利便性は低下して企業内の生産性も低下していくものです。製造業様であれば、通常の文書以外に図面や設計書なども法的保存年限も決まっております。総務課、管理課で企業内文書は一括管理が望ましいですが、保存年限、文書分類を定めて、現業部署に管理していただくものと、長期保全年限のものは総務で一括管理などのように、分散管理体制を整備する方法もあります。企業は売上とか利益の追求以外に顧客の信頼を勝ち取るためには企業内での生産物(文書や証跡を含む)をしっかり管理する必要があるのではないでしょうか?これは経営責任とも言えますね。時間があれば次回のコラムで電子帳簿保存法について深堀していきたいと思います。コンサルティングのご相談は小回りの利くJ&Cカンパニーへ
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