オフショア開発 最新動向
2023年オフショア開発最新動向をお伝えします。
昨今の円安の逆風も大企業を中心にオフショアの検討は増加傾向です。「コスト削減」を主たる目的として広がっていた「オフショア開発」ですが、ここ5年ほどで、「コスト削減」に加え、逼迫する国内ITリソースを補う意味での「リソース確保」の側面での活用がより重要度を増してきました。国別では1位:ベトナム(48%) 2位:フィリピン(21%) 3位:インド(13%) 4位:バングラデシュ(8%) 5位:中国(4%) ミャンマー(4%) 6位:ウクライナ(2%)という状況で、依然としてベトナムに人気が集中しているようです。これほどベトナムに相談が集中する理由として「選択肢の多さ」があります。日本企業からのオフショアのニーズ増加に伴い、その受け手であるベトナムオフショア開発企業は急増。その成り立ちは、主に次のような構成になっており、それぞれの特長を活かした提案を行ってくれます。下記の様にベトナムには様々な形態で日本企業の進出が盛んに行われています。
主要なオフショア国としては、今回低迷したのがミャンマーと中国の2カ国です。要因は「カントリーリスク」と言っていいでしょう。これまでミャンマーでは、2016年にアウン・サン・スー・チー氏が実質的な権力を握ると、民主化が本格的に進むという予測のもと国外からの投資が増え、課題であったインフラの問題などが解決されつつありました。その流れに呼応するように、相談のシェアは増えていき、その結果として、プロジェクトを進める力を持ったエンジニアの育成が進んでいます。また、ベトナムと比べても安価なリソースが強みで、にわかに人気を集めていました。
しかし、2021年に勃発したクーデターの影響が大きく、2022年においても依然としてリスク回避をしたい発注企業側の意思が働いていると思われます。ただ、現状ミャンマー現地におけるオフショア開発自体は問題なく稼働しているようです。また2022年においては、オフショア開発全体で円安の逆風が吹いていましたが、ミャンマー通貨チャットもクーデターの影響でレートを大きく落としているため、ミャンマーは大きなコストメリットを実現できる可能性を秘めています。ミャンマーはポストベトナム最前線として、エンジニアのレベルが急成長している国です。政情が一変し、不安定な状況ですが、有望なオフショア先としてのポテンシャルは確かです。引き続き、政情の動向を注視していかなくてはいけないでしょう。続いて中国ですが、新規発注シェアは年々減少傾向で、昨年7%→4%という結果でした。ただし、あくまでオフショア開発を「これから」発注する企業の割合であるため、既に中国のオフショア開発企業を活用している企業は多く、市場規模としては大きいことには留意する必要があります。
ただし、2022年はカントリーリスクの増大と単価上昇の影響が大きく、そうした案件もベトナムやその他の国へのシフトが始まっています。
※オフショア開発ドットコム:オフショア開発白書2023年版より抜粋
それでは、この先、中国をオフショア開発先として活用することは難しくなっていくのでしょうか。この問いの答えはある意味では「正しい」でしょう。BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に代表されるように、いまや中国企業の技術力は日本を凌ぐと言われています。それに伴って単価の上昇は著しく、場合によっては日本国内以上の単価となることも出てきています。一方で、技術力の著しい向上から、中国企業でしか開発できない案件も増えてきています。その点で、「オフショア開発」ではなく、インドと同様「グローバルな開発体制の構築」の手段として捉えられていくことになるでしょう。ただし、中国は長く日本のオフショアパートナーとして機能してきました。そのため、中国人エンジニアが在籍している国内企業も多く、そうした中国人材を中心にオフショア開発を行うことで、円滑なコミュニケーションを実現している場合もあります。
また、グローバルにビジネスを展開している企業では、開発拠点ではないものの、中国に拠点があることもあり、そうした既存拠点との連携を視野に中国オフショアを新規で検討することもあるでしょう。中国からのシフトは全体的なトレンドではある一方で、企業ごとの個別の事情によっては、中国が最も有望なオフショア先であるケースもあるでしょう。カントリーリスク、単価高騰も踏まえ、中長期的な判断が発注検討企業には求められると言えるでしょう。
※オフショア開発ドットコム:オフショア開発白書2023年版より抜粋
オフショア開発ドットコム:オフショア開発白書2023年版を参考にすると、オフショア開発ドットコムの集計によると、スモールスタートでオフショア開発に取り組みやすい環境になってきているようです。501〜1000万円の規模での開発が一番多いようですが、注目すべきは、300万円以下の開発は全体の30%以下となっている点です。以前のオフショア開発は「コスト削減」が至上命題となっていましたが、近年は「リソース確保」の色が強まっています。オフショア開発企業においても、現地の単価上昇に伴い、数年前と同じようにはコスト削減の期待に応えられなくなっています。300万円以下の予算額では、請負契約での受け入れ基準のボーダーを下回ってしまうことも少なくないでしょう。
※オフショア開発ドットコム:オフショア開発白書2023年版より抜粋
円安の影響か?ニーズは「コスト削減」から「リソース確保」へ変わりつつあります。オフショア開発ドットコムの2021年、2022年のアンケート結果では、新型コロナウイルスの影響による景気の低迷、コスト意識の高まりなどから、いずれもコスト削減がトップの回答でした。今年の結果は下記のフラフのようになります。
長らくオフショア開発の主たる目的は「コスト削減」でしたが、ご覧の通り「開発リソースの確保」がトップの回答となりました。国内の人材不足が多くの企業で課題になっていることが伺える結果ともいえるでしょう。人材不足に伴い、「開発スピード」に課題がある、という回答も3番手につけています。「コスト削減」を「開発リソース開発」が上回った背景としては、2022年を通して円安の影響により、オフショア開発でのコストが高まったことも要因としては大きいでしょう。各オフショア開発企業で単価を値上げする動きも少なくありませんでした。コストの面では逆風が吹くオフショア開発動向でしたが、国内のリソースの逼迫からオフショア開発の検討が継続されたと考えられます。「今後のオフショア開発」について質問したところ、結果が次のグラフとなっています。過半数が「拡大していく」とする回答であり、「縮小していく」という回答はありませんでした。すでにオフショア開発を検討・活用している企業にとっては、オフショア開発が必要な企業戦略となっているといえるでしょう。外国人エンジニアの活用割合に関しては、昨年からの大きな変化はありませんでした。ただし、それでも全体の半数以上が外国人エンジニアを活用しています。オフショア開発においては、次のような外国人エンジニア活用の取り組みがあります。
繰り返しになりますが、今後はほとんどの日本企業がオフショア開発、外国人エンジニアを活用せざるを得ない時代になっていくでしょう。どのような開発体制が最適なのか検討を進めている企業も少なくありません。まずはスモールでもオフショア開発への取り組みを始めていくことが重要となります。
まず「オフショア開発企業に感じた課題」についてです。第1部でも述べましたが、オフショア開発を成功させるためには、ノウハウや経験が必要です。実際に行った上での課題を把握し、発注側・受注側双方で解決していく必要があります。アンケート調査では、オフショア開発における課題をより浮き彫りにすべく、国内開発企業に対しての課題も調査し、比較を実施しています。下記2つのグラフをご覧ください。
次に、オフショア開発を成功させる上で重要なことについて質問しました。次のグラフを御覧ください。「オフショア開発を成功させるうえで何が一番重要か」という問いに対し、圧倒的に「コミュニケーション」と答える企業が多く、続く回答も「ブリッジSEの能力」「プロジェクトの進め方」となりました。
上記の結果は、第1部でも取り上げましたが、ラボ開発の増加が関係していると推察しています。自社開発チームと同じようなイメージで、海外にリソースを確保できるラボ開発ですが、ブリッジSEの役割・能力がプロジェクトの成功に関わってきます。さらにはブリッジSEとうまくプロジェクトを進めていくためには密なコミュニケーションが欠かせません。いずれにせよ、開発はトントン拍子でいくものではなく、あらゆるトラブルの発生が想定されます。そうしたリスクを回避、あるいはリスクに直面しても対応していくためにもコミュニケーションや窓口となるブリッジSEの存在、そして信頼関係が重要となります。その点からも、上記の結果は頷ける結果であるといえるでしょう。さて、以上の結果から、オフショア開発の成否を握るポイントは、発注側と受注側の関係性にありそうです。つまり、コミュニケーションが円滑で、お互いに信頼でき、その結果プロジェクトマネジメントがうまくいく企業を見つけることにこそ成功の鍵があるということです。
ベトナムを中心にオフショア開発会社の選択肢が増えている中で、どのようにオフショア開発企業を選定していけばいいのでしょうか。技術力は基本として、先述したとおりコミュニケーションの相性が重要となるため、多くの企業が実際に現地を訪れたり、フロントとなる日本側の営業人材とのコミュニケーションを判断軸にしているはずです。関連して、実際の現地人材との「架け橋」となるブリッジSEの存在も重要となるでしょう。
最後に第3部では、オフショア開発の実態を調査すべく、サービス提供側である現地のオフショア開発企業にアンケートを実施しました。本調査では、どういった規模の開発企業が存在するのか、またどのような単価でサービスが提供されているかについてレポートいたします。
オフショア開発企業の実態調査において、「開発コスト」に直結する「人月単価」は最重要ポイントと言って良いでしょう。昨年と同様、人材の職種別の人月単価を国ごとに調査いたしました。その結果が下記となります。
さて、これまではオフショア開発企業の規模や人月単価を見てきましたが、続いては彼らの強みや弱みについて深堀りしていきたいと思います。近年、オフショア開発はリソース確保先として活用されるケースが増え、その結果、開発の一部分を切り出して依頼することも増えています。強みや弱みを深堀りすることにより、どの部分をオフショア開発に切り出していくかを検討する一助としていただければと思います。また、弱みをどのように補ってくべきか、といった観点でも示唆が得られそうです。加えて、第2部で取り上げた発注企業が考える「オフショア開発企業の課題」と照らし合わせてみることによって、新たな課題が浮き彫りになってきそうです。結果は、次ページのグラフのようになりました。
最後にオフショア開発企業の技術領域に関する調査をまとめておきます。次のグラフは、オフショア開発企業が対応できる技術領域をグラフ化したものです。オフショア先においても、リソースが豊富な領域と、不足ぎみの領域がありますので、是非、オフショア開発検討の際にご活用ください。
いかがでしたでしょうか。今回の記事は、オフショア開発ドットコム様発刊の「オフショア開発白書2023年版」より一部抜粋させて頂き、最新のオフショア開発状況を第三者の視点という側面でご紹介させていただきました。当社もオフショア開発ドットコム様には従来から案件紹介やセミナー登壇などで様々な機会を頂いております。興味があれば白書をダウンロードしてみてください。
全体的な観点から確かにオフショア開発ドットコム様の記事にもありますように、当社が運営している中国ラボ体制にも影響はあります。しかしながらコロナ前と比べ、現在受注は拡大しており、「高度IT人材リソース確保」を目的としたお問合せが増えていることが特徴となります。小生の経験では、国の差も比較することは重要ですが、各国で努力されている会社によって取組度は異なります。従って一概に国を比較することよりは、各社から提案を頂き比較検討することが望ましいと考えます。
また、一夜にして城は築けません。前述しましたように、最初はスモールスタートを繰り返しながら、オフショア開発成功の重要項目であるコミュニケーションに重きを置き、技術者同士、会社同士の信頼関係を構築するぐらいの計画性をもって、長くお付き合いできそうな会社選定をするべきでしょう。
当社J&Cカンパニーでは、現在オフショア開発という言葉を使用せず「グローバルリモート開発」という言葉に置き換えております。それはお客様のニーズが変わり、時代の変化とともに「優秀な技術者リソース確保」が最大のニーズになったことを受けています。中国におけるソフトウエア開発技術は日本にとって良きパートナーとなることは確実です。ビジネスは政治とは切り離されています。優秀な人材確保でお悩みの企業様!是非お問合せ下さい。